社長だより vol.38

【春はもう少し先・・・】

 第七版の広辞苑を買った。見た感じは「七」のところが違うだけで、あとは期待通り何の変わりもない。「新村出編」にも安心した。元国語教師の86歳になる従兄は、10年ぶりの改訂版をよほど待っていたらしく、秋田駅前の本屋に注文したとかで、発売日にナップサックを背負って買ってきたそうだ。第二版から毎回買い求めているとのこと。私は広辞苑専用の真っ黒なビニール袋に入れ、車まで運ぶのが“重かった”。
 この広辞苑、傍にあって、ただページをめくって言葉を眺めているのもいい。ネット検索広辞苑では少々信憑性に欠けるが、その点辞典は安心だ。全く違う言葉にも出会えてついついみてしまう。

  紙質の違いやインクのにおいを感じながら、最初に探した言葉は「如月」。“(草木の更生することをいう。着物をさらに重ね着る意とするのはあやまり)陰暦2月の異称”とあった。その夜、偶然、布団の中で読んでいた「言葉の歳時記(新潮社、新潮文庫、金田一晴彦氏)」に、“「きさらぎ」というのは余寒が厳しくて衣類をさらに重ねて着なければならない、つまりは「衣更着」の意味だと古くから言われている”とある。広辞苑の初版は昭和30年5月。「言葉の歳時記」は、昭和48年8月の発行、同氏も目にしたと思うが、大寒のころ、「衣更着」はぴったりだと思う。

  三菱重工カレンダー変わってほしくないものはいろいろあるが、「三菱重工のカレンダー」もその一つ。まだ駆け出しのころ、メーカー担当者から“コンクールで優勝したんだ”と言われたことがある。飾り気のない数字だけのこのカレンダー。今年、表紙(1月の前ページ)に小さくその由来が印刷されていた。『昭和26年以来の“玉”カレンダー。玉とは印刷用語で数字のことを指す。使用している数字は三菱重工でデザインしたオリジナルの字体であり、赤や黒の深みを出すために二度刷りを施す手法と併せ、そのこだわりは発行以来変えずに作成し続けている。この端正かつシンプルでありながら力強いデザインは文部大臣賞や通商産業省繊維局長賞などを受賞した実績もあり宮内省へ献上していたこともあります』、と。当時は和紙ではないかと思えるほどの厚手の真っ白な紙。今も指に感触がのこる。裏に図や表を書くと、妙に立派にみえ、捨てるのには惜しい気持ちが残ったものだ。今も他社で出会うとほっとする逸品だ。切絵の寒椿

 積雪の様子 節分が終われば翌日は立春。春が立つと書くが、雪解けが進み、「ばっけ」が出始め、ある日「まんさく」の花が“おーい”と声をかけてくれそうな気配も感ずる。 “「立つ」は今まで存在しなかったもの、一般的に神秘的なものが忽然と姿を現した言葉であり、「竜」をタツというのも常に隠れているものが現れる意味だろうと推定される(同、言葉の歳時記)”と金田一晴彦氏はいう。春が待ち遠しい。

平成30.2月