社長だより vol.39

【なごり雪に想う】

♪汽車を待つ君の横で ぼくは時計を気にしてる汽車
 季節はずれの雪が降ってる
 東京で見る雪はこれが最後ねと
 さみしそうに 君がつぶやく
 なごり雪も 降る時を知り ふざけすぎた 季節のあとで
 今 春が来て 君はきれいになった

 作詞・作曲:伊勢正三

 まだ寒いが春めく気配を感ずると、「なごり雪」という歌が遠い記憶に染み込んでくる。小声で歌うと柄にもなくモノクロ映画の一こまに一瞬の残像を観てしまう。広辞苑では「なごり雪」にどんな解説をしているのかひいてみた。以外にも「なごり雪」は無く、「名残りの雪」として、「春になってから冬の名残りに降る雪」とある。万葉集あたりに使われていそうな感じなので、友人に聞いてみた。数日後に“わからない、4~5年前に気象台に登録されているようだから新しい言葉かもしれない”と「季節の言葉36選」としてメールがきた。
 確かに3月に「なごり雪」があった。他に雪の付く言葉は1月に「雪おろし」、4月に「花吹雪」がある。意外に少ない。選考対象として、11月に初冠雪・新雪・雪つり、12月に地吹雪・雪景色、3月あたりに淡雪・雪柳・雪虫・雪解け、4月は雪の回廊などが思いついた、しかし、豪雪の中で暮らす人々を考えれば「雪おろし」だけでも十分なのかもしれない。毎日の雪かき・除雪はこたえる。

 はだれ雪私は、どことなく春めいたきざしを感ずる頃、舞って降る雪を「淡雪」、さらっと積った雪を「はだれ雪」と言っている。この「はだれ雪」という言葉をいつ覚えたのか全く記憶にない。
 例の広辞苑に「はだれ」がある。「まばら」という意味だそうだ。使用例として万葉集の『笹の葉にはだれ降り覆ひ消なばかも忘れむと言へばまして思ほゆ』が載っている。「はだれ雪」の説明は前後したが、“はらはらとまばらに降る雪。また、うっすらと降り積もった雪。まだらになった残雪”としている。これからは「はだれ雪」を“はらはらとまばらに降る雪”としよう。

 その後、友人から第二弾。『笹の葉に・・・』の意味は “うっすらした雪が解けてしまうように私を忘れてしまうという君が一層愛おしくなる”とメールは言う。と、すれば、本万葉集は現代意訳として、『東京で見る雪はこれが最後ねと さみしそうに君がつぶやく』がしっくりくる、と勝手に得心しているがどうだろう。もっと縮めれば、「私を忘れないで」でもいいのかな~。それにしても今時分の「なごり雪」という歌は静かなときめきをのこす詩(うた)だ。春が待ち遠しい。

平成30.3月