2020.01.06 | 社長だより

社長だより vol.61

【シロネズミ】
09_73①
 お正月と言えば、お雑煮。我が家はつゆっこ餅。昆布と鶏の合わせ出汁。角切りの焼餅、具材はいたってシンプルで、鶏とみつぱそして蒲鉾。結婚して味噌仕立てからこのスタイルとなった。大晦日の年取りのお重を突っつきながら元旦に食べると新年を迎えた気になる。そして、体重が気になるころに七草粥となる。腹にやさしく野菜がごたごたはいった大好きなお粥。戦中・戦後のことはわからないが、贅沢な雑炊を食べると新年へ一層神妙になる。

 今年は子年。十二支の始めがなぜ鼠なのかの由来はとうとうわからなかった。そのうちの出会いをまとう。地方によっては正月に鼠というのを嫌って“嫁が君”というそうだ。言葉の歳時記(*1)に「養蚕の盛んな地域で蚕に害を及ぼすものとして鼠を非常に嫌い、鼠と言っただけでそこら辺から出てくるので、“嫁が君”とこっそりと言った」そうだ。また、「嫁が君と呼ぶ理由は、ヨノモノ・ヨモノ・ヨメゴなどとなまってヨメがキミとなった」と紹介されている。
 鼠はコメ・野菜を食い荒らすなど害をなすもの。昨年はマイ畑のジャガイモ・さつまいも・カボチャ・メロンをほとんど壊滅させたにっくき害獣でもある。また、『子の年は穀ミノラズ』というが他の干支でもおなじこと。自然災害は繰り返される。凶作に備えよと言っているのだろう。また、怪談めいた子規の有名な『行燈の油なめけり嫁が君』とかもあり、彼らには何の責任もないのだがその器用さが災いをなしている。

 そのかわいい姿に似合ういい諺がなかなか思いつかない。「子孫繁栄」が浮かぶものの、一方で“ネズミ算式で増殖”の表現はいろんな局面でより多く使われる。彼らの名誉回復にふさわしい言い回しかどうかは分かれるが、『天井で鼠が鳴くのは吉治が来る兆し(*2)』、くるくる立ち働くことを「コマネズミのように働く」がある。江戸時代には「あの大店(おおだな)のシロネズミ」という言い方があった。このシロネズミは主人に忠実な奉公人、番頭さんを指すと聞いている。なぜかというと「ネズミはチュウ(忠)と鳴くからだという。ネズミの中でも白いネズミは数も少ないので特に珍重されたのだろう*2」

 今年は一部エコノミストの間で、景気に変調をきたすのではとの予測がささやかれている。地道な商売を目指し、『ネズミにひかれないよう』シロネズミの経験と勘を大事にしよう。そして、「いまだかつてないとか、命を守る行動」などのニュースがないことを心から祈ります。

*1 言葉の歳時記(1月2日) 金田一春彦著  新潮文庫
*2 語源散策(十二支散策)  岩淵悦太郎著  毎日新聞社

令和2年.1月