エコムジャーナル No.5
「鳥海山さ登ったごどある?」5年前に学生時分の同級生が集った忘年会にて、ふと交わした会話が登山を始めるきっかけとなりました。長いようで短い4ヵ月、2度目の投稿となります秋田担当Aです。
30代も終盤に差しかかったことで、その夜は「何か新しい楽しみを見つけよう」という話題に。「温泉めぐり?島めぐり?いや、身体を動かせる方がいいんでねべが?」話が盛り上がり、そろそろ日本酒をオーダーしようとお店の黒板を見ると、この日のオススメは“鳥海山“の生酒でした。その刹那、これまでなかなか縁がなかった秋田・山形の県境にそびえる名峰を一度は登ってみたくなり、冒頭の会話へ。木の葉が色づき始めた2016年の秋、いざ鳥海山へ―――
午前9時、鉾立口駐車場に到着。身支度をしていると、隣に駐車していた関西弁の年配ご夫婦が声を掛けてきました。「お兄さんたち日帰り?スーパーマンやねぇ。」聞くと全国の山々を登っており、前日は山形県にある月山を登ってきたという。そんな登山経験が豊富なご夫婦の言葉の意味をこの時はまだ知る由もありません。
振り返ると1座目となるこの登山から天候に恵まれず、この日も小雨まじりの曇り空。晴れの日は標高が上がるにつれて西側に日本海を見渡せるはずが、ネットや雑誌で予習してきた見晴らしはどこへやら。ガスの中を4時間半ひたすら登るだけか・・・しかし、まるでご褒美が待っていたかのように山頂を目前にして空の色が変わりはじめ、新山に着くころにはすっかり青空に。新山は立っていられるのもやっとなくらいの強風でしたが、それが幸いして目の前の薄い雲がよく流れ、切れ間から雲海を眺めることができました。
山頂の小屋で昼をとり、体力も天気も回復した15時に下山をスタート。日本海の上に広がる雲海を見ながら歩を進めます。太陽は少しずつ赤みを帯びはじめ、夕暮れの支度を進めます。黄昏時を迎えたのは8合目まで戻ったころ。秋は夕暮れ―――疲れを忘れて雲海に陽が沈んでいく光景を眺めながら、聞き覚えのある作品の一部が頭を過りました。
夕陽に先を越され、気がつけば禍時となり空は藍色に。辺りはみるみる暗くなるも、まだ7合目を過ぎたばかり。それからは鉾立口の灯りを頼りに、1歩ずつ足元を確かめながら真っ暗な登山路を進みます。「今朝の言葉はそういうことか・・・」1年後の同日、鳥海山は2017年の初冠雪を記録しました。山はもう冬支度が始まっているとも気に留めず、朝9時から素人マル出しの日帰り山登り。山の魅力と怖さを知った鳥海登山となりました。
あれから4年、鳥海山を見る度<飲む度、当時のことを思い出します。思い出しては、「いつかまた登りたい」という気持ちに駆られます。
まだ残雪のある6月頃から、鳥海の夜空に天の川がかかるとも言われます。次回は初夏、年配ご夫婦のように山頂の小屋に泊り掛けでしょうか。
※ 画像3枚目は「鳥海山・飛島ジオパークHP」より