2023.03.01 | エコムジャーナル

エコムジャーナル No.32

 北上担当のKです。この度もよろしくお願いいたします。

 2か月半ほどに以前になりますが、私が現在所属しております花巻市のビッグバンド、花巻リズムヤンガーの75周年記念コンサートに参加しました。当時はコロナウィルスの流行が盛んな時期でしたが、発売当初からチケットが慢性的に不足するという状況でして、大変盛況のうちに終えることができました。コロナ禍の影響で1年延期しての開催になりますので、正確には創立76周年です。これは現在確認されている中では、日本最長の歴史を持つ社会人アマチュアビッグバンドとなります。

 太平洋戦争終結後、進駐軍により花巻城跡に地区の駐屯本部が置かれ、花巻温泉の旅館ホテルが同時に接収されます。今では想像するのが困難なのですが、当時の花巻温泉は温泉施設だけでなく、ゴルフ場や動物園、遊園地などの施設が隣接していた総合レジャー施設だったそうです。当時を知る方の話では花巻温泉を「温泉」とは呼ばずに、「遊園地」と呼ばれ親しまれていたのだそうです。旅館ホテルを接収した進駐軍の中から、次第にではありますが花巻温泉内にある小学校の講堂でバンド演奏をする者が現れ、やがてアメリカ兵の娯楽を目的として定期的なライブ活動を行うようになったそうです。

 日本国内は戦後まもなく、第一次ジャズ黄金期としてこの時期を表現する識者もいるほど、進駐軍が持ち込んだジャズの一大ブームが発生していました。その流れもあってか身内の娯楽として行われていた米兵のライブ活動は、ほどなく日本人にも開放されることとなり、当時は市内の足となっていた花巻電鉄の鉄道線沿線各所で演奏活動は拡大していきました。本場のアメリカンジャズに接した若者の反応は早く、日本人によって結成されたジャズバンドが次第に活動を始めることとなり、花巻リズムヤンガーもアメリカ兵のライブに触発されて生まれたバンドの一つだったそうです。

 今回の75周年記念コンサートのパンフレットに、過去の歴代所蔵メンバー名鑑というコーナーがありまして、76年前の創立メンバーから現在に至る動静を伺うことができます。このページを眺めていると、見知らぬ同好の方々の息吹を身近に感じられるようで、なぜか妙にエモーショナルな気持ちになります。こうして受け継がれる歴史を可視化することで、ある種の責任感といいますか使命感の様なものまで自分の中に湧き上がってくるのです。
ページの末尾に、岩手から遠く離れた土地からやってきた私の名前がクレジットされているのを見ると、本当に不思議に気持ちになります。人はそれぞれ無自覚な中で歴史の一員なのだと思います。

今回の1枚
山下洋輔 「クレイ」

 若き日の山下洋輔さんのエネルギーそのものともいえる名盤。日本フリージャズの最高傑作との呼び声が高いです。先程戦後間もなくのジャズブームを第一次ジャズ黄金期と表しましたが、その流れをくむ形で1960年代半ばから1970年代にかけての、渡辺貞夫さんや日野皓正さん、そしてこの山下洋輔さんなどをはじめとする伝説級のプレーヤを多数輩出したこの時代を、第二次ジャズ黄金期と表します。最近東京の知己より、東京のライブシーンにおいて20代の才能が次々と発掘されているともしかしたら近い将来、第3次黄金時代がやってくるかもと期待しているのです。

 北上担当のKでした。今回もありがとうございました。