2023.11.01 | エコムジャーナル

エコムジャーナル No.40

 北上担当のKです。大変に御無沙汰をしております。
 この文を目にしていただきまして、ありがとうございます。よろしければではありますが、最後までお付き合いを頂けましたら幸いです。

 私がこの文を書かせていただくときは、趣味のジャズについてのものになるのですが、ここしばらくは私個人の周辺にまつわる内容だったので、今回は世界のミュージシャンに関しての雑感をと考えておりました。実のところいったん別の原稿を上げさせていただいたのですが、先日10月17日にカーラ・ブレイ氏の訃報が入りまして、急遽原稿を差替えさせていただきました。

 私の学生時代からの友人にプロのベース奏者がいるのですが、お互い19歳の時分に一緒に行った三軒茶屋の居酒屋で、すっかり酔っ払った彼が「カーラはいいよー、カーラは。」とあまりにしつこく言い続けるもので、2日後くらいに「Night Glo」というCDを購入したのが、私にとってのカーラ・ブレイ氏との出会いでした。

 その時代、80年代のカーラ・ブレイのスタイルはフュージョン+クラシック音楽の下地も感じさせるとても美しいメロディにあふれた、4人編成ないしは管楽器を含んだ8人編成のバンドを率いていたことが多いのですが、帝王マイルス・デイヴィスを同様に彼女もキャリアの進展と共に、自己のスタイルを大きく変遷させていくタイプのジャズミュージシャンでした。

 私が持っているCDから選びまして3点ばかり紹介させていただきます。

「THE BALLAD OF THE FALLEN」(邦題 戦士のバラッド)
ベース奏者のチャーリー・ヘイデンが主催するレベレーション・ミュージック・オーケストラという小編成ビッグバンドの第2作。カーラ・ブレイ氏が音楽監督を務めており、チャーリー・ヘイデン氏の原曲のビッグバンドアレンジ及びコンサートマスターとしての音作りを担当している。スパニッシュモードを土台としてフリージャズ的な即興演奏の要素が強い内容となっており、「La Pasionaria」などの名曲は日本のミュージシャンにも多大な影響を与えています。ジャズ史においても重要な一枚と考えます。

「FLEUR CARNIVORE」
カーラ・ブレイ自ら編成したビッグバンドによるアルバムです。先に挙げました「戦士のバラッド」とは打って変わって荘厳ともいうべきメロディと構造美にあふれた音楽となっています。標題となっているFLEUR CARNIVOREという大曲は、彼女の美意識が惜しむことなくあらわされている美しいジャズオペラなのですが、他の作品ではむしろそういった美的感覚をダイレクトに表さない傾向があるのも、彼女の表現する人としての多面性を表していると思います。

「SONG WITH LEGS」
これまで上げてきたアルバムとは打って変わって、変則的な3人編成の作品です。私はドラムレストリオ(ドラムなし)であると考えます。メンバー構成はカーラ・ブレイ(ピアノ)、スティーブ・スワロー(ベース)、アンディ・シェパード(テナー&アルトサックス)。ドラムがいないということは、自分の中で熟成されたリズムをいかにして同調させるかというのがこういうドラムレス編成の肝でもあるのですが、それ故に三人三様のリリシズムが浮き上がっていると思うのです。特に一番最後の曲である「Crazy With You」は名演です。

 先程少しふれましたプロベーシストの友人は、SNS上でこのように語ります。
 サントリーホール小ホールで体験した演奏は確実に僕の人生を変えたと思っています。
 本当にありがとうございました。

 本当に素晴らしいメロディメーカーでした。そしてそれはこれからも変わる事は無いと考えます。ありがとうございました、そしてこれからもよろしく。

以上、北上市のKでした。最後まで読んでいただきありがとうございました。